りすぺくつしたい

歴史とか自分のルーツとか。ちょっと考えてみたい、少し阿呆な奴が生息しておりまする。

高知と佐賀と食卓の話(其の弍)

一寸ばかり昔の話をしても許されるだろうか。

僕は有明海苔と緑茶にはチョッピリ贅沢を出来る家庭に居た、ってことを。


厚ぼったい海苔は湿気を含んでいて、ガスコンロでは中々パリッと焼けない。

理由は中学二年で習う化学で証明出来る。


エチレンガスはCが2つ、Hが6つ。


つまり、エチレンが1分子燃えると二酸化炭素が2個、水分子(H2O)が3個出来る。

燃えると水が出来るのは割合は違えど、エチレンガスでもメタンガスでも一緒。


美味しいパリパリな海苔を食べるには、炭火が一番。

炭(C)の塊ならば、いくら燃焼して酸素が結合しても二酸化炭素しか発生しないのだ。


とか、初めて学校の勉強が面白く感じた時のことを覚えている。

毎日の食事を忙しさの中、必死で用意していたお袋さまやら姉上どのに、

んなしょーもないこと考えながら海苔の当番をしてました、とか。

イチイチ伝えなかったけれど。


まぁ、そういうことをノンビリ考えさせてもらったお陰か、

厳めしい我等が九州男児さまにも、海苔の焼き加減だけは誉めてもらえた。


(逆に言うと、他に誉め処が無かったりしたのだが)


後は、お茶。


これは完全に姉上どのの領域。

湯を冷ましつつ急須と湯飲みを温めておき、最も適した瞬間に

茶葉の香りを最大限に引き出す。

この同時進行な手技を、僕はどうにもこなすことが出来なかった。


この頃から、僕は目指していた分野には不向きで有ったのかもしれない。


兎も角、海苔を頂いて白いご飯。

皆で満腹になって程好く温かい緑茶。


海苔は有明、お茶は嬉野。


そう、九州男児さまは肥前の御方であったのだ。

肥前ではなく古来より「佐賀」と呼んだのだ。

彼からそう教わるのは、もう少し先の話。


その時、僕は土佐女であるお袋さまへ問うてみた。


「土佐からは海苔もお茶も送って来ないねぇ」


あの水捌けの良い山の中。

ちょぉっと手を入れれば、良い茶畑になるんじゃないのかなぁ。

山だから、どうせ田んぼじゃ効率悪いんだし。


それに、山をいっぺん下りてしまえば直ぐ海だ。

路が舗装された今なら海産物だって手に入るだろうし。


と、お袋さまは怪訝な顔をして



「何でワザワザ海苔(なんぞ)を送られねばならんのだ(今だってこんなに苦労して減らしているのに)」



うっわ、今日も地雷踏んじゃったよ。



九州男児さまの周囲体感温度が...3℃は低下したかなぁ。



くろうまを注ぐ彼の手が重々しいのにキヅカヌ振りで、


「じゃぁ、お茶は?」


彼女は無類の茶好きで、冷え症だ。

ぬくくて旨い茶にエライ執心しておられる。

これならば外すまい、と思われた時。


「垣根の葉っぱを摘んであれこれすれば出来るものをイチイチ買うのか?」



阿呆くさ。



言の葉の外っかわで撫で斬りだよ男衆。

要は、




海苔=ワザワザ山を下りてまで求めるには値しない食材

茶葉=生け垣から採集し放題


という訳らしい。



こりゃぁ、佐賀の自虐指向(から日々の活力を得る質の)男が日々イラッとせずにはおれんだろーなぁ。



とか、考えながらその日も僕は海苔を食らっていた。

もう有明海苔は送られて来ない。

(前程には)


今は、破れ海苔を焼かずに食している。

近隣の、ちっぽけな漁港の、更ぁにひなびた釣具店のおばばさまが好意で持たせてくれるらしい。


何だかこの九州男児さま、マイナー向けなんだけど昔っから歳上に構われるんだよなぁ。


僕はろくでもないのにばっか引っ掛かってこのザマナンだけど。

ともかく、その日も焼かずに海苔を喰らった。


親父さまが焼酎、僕は素面。

実は僕の方がずっと彼よりつよいんだけれども。


彼の前ではもう、御酒は頂かない。


これだけで、結構果たせる義理もあったり、無かったり。

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