りすぺくつしたい

歴史とか自分のルーツとか。ちょっと考えてみたい、少し阿呆な奴が生息しておりまする。

僕んちの菜々さん(土佐のお話)

僕んちには、お姫様が一人いらっしゃる。


四国だかの山んなか。
もうとっくに没落してしまった、今では村名さえ残ってはいない(合併されて現在は町となっている)...とある城下町跡の出身だそうな。


彼女自身は、己の生まれ育った故郷。
其処が元は御城下であったことを知らない。


少なくとも、僕が「知っている」というのを「知らない」。


性格は、まさに何処かの深窓のお姫様そのものだ。
彼女のことで行き詰ると、夏草の賦を開く。


荒唐無稽で現実無視で、ふざけきったおちゃらけ小説。


堀江健一さんやら植村直己さん。僕は情けないことに古本屋通い中心だったから中々出くわせなかったけれど、やっぱりC・W・ニコル氏。


後は僕より若い世代にも有名な作家(で軍資金稼ぎなぞしつつ冒険に出かけている方々)さん達。


史実を虚々実々散りばめるのが大変上手でいらっしゃる、多作で有名なこの筆者さん。


彼が一作ごとにダンプカー一杯掻き集めていたという資料。
その中には僕の推している方々の著書は一冊も入れていなかったこと。
一行だって目を向けることがなかったこと。


明々白々。



少なくとも、海の上で「お粥が炊けるような大鍋。木造船上これ使って煮炊きしたらどうなるか」を全く考慮しなかったんだろう。
机上の空想のまんまに好き勝手馬鹿やらかして書きなぐってくれたってこと。


当時阿呆んだら呼ばわりばっかされてた、どっかのガキにだって丸わかりだった。


この作品のヒロインは、初めての船上でお供が船酔いしちゃって全滅してしまったから、さぞ退屈であったろうな。


大変好奇心旺盛でいらっしゃったらしいから「皆が酔っぱらってしまうような荒波の上で」どうやってこぼさず粥なんて高温の粘液質(でんぷんを大量にぶち込んで混合物にしているのだ。沸点は跳ね上がって然り。だからこそ『食える武器』になるんだろう)をグツグツやれてるかはさぞかし気にかかったであろうに。


作者さんがその辺に全く無関心なので、彼女もその辺りに気付けない。
可哀想に、此処でお馬鹿な船員の誰かがウッカリ足元でも滑らせて火の粉でも散らしたら。


燃え草だらけの板子一枚、下どころか丸ごと地獄であったろうに。


呑気な菜々さんは、丸っきりその辺に思い至れずに。
船旅を楽しんでいるんだかいないんだか。
そもそも本当にそこは船の上なのか、何かのドラマのセットなのか。
きっちり波に揺られて浮かんでいらっしゃるのか。


サッパリ判然としない不思議空間であったりする。




我が家のお姫様も、ちょっと現実離れしていらして。
自分の周りの『古いもの』には、徹底的に冷徹で無頓着だ。


天下を取る(誰かより偉くなるとか地位が上だとか、知りもしない異国は無条件で素晴らしくて良いものだ。そう無条件に信じ込んでいるとことか)ことに異様に敏感で、彼女を本当に大事にしている人間を徹底的に貶めても平気。何時も他所のどこかや誰それに恋煩いしていらっしゃる。



だけれども、自分がきちんと地道な努力をすることは大嫌い。



言葉も通じないらしい異国の海の領主。
彼の元へ島流しされるのが解りきっていて、自分から志願したくせに、何の準備もあいさつ回りも嫁ぎ先への根回しどころか情報集めすらしない。


この時代の「家同士が結び付く」という意味。
現代人にならまだ親しみやすい戦略的意義ですら。


まるでわかっていらっしゃらない。


ぼけぇえっ…と庭の木なんか見ていたりなさる。
言葉も通じない場所へ行くのに、しょーもないエセ知識を披露するしかない時間が続く。



こんな調子の世界で今更、胡散臭いトリビア(死語)なんて要らないのに。



とかそろそろかったるくなってきたら。
なんともタイムリーに、後の天下人でお兄さんの主君のライバルさんがわざわざ遣って来てくれる。
なんでだか兎に角こんなお姫様を盛大に最大限に褒めちぎって、でろんでろぉんに甘やかしてくれる。


まさにエロい小説で手っ取り早くヒロインをageageする古典的手法。



そう。心配なんかはいらないのだ。



この時代に「平仮名しか書けない」オネエ属性な宿屋主人さんですら理解できなかった謎言語。


(異邦人の出入りする筈のこの場所。情報の集積され更新され続ける要所である、という認識をこの作品で持つこと。何故だか許されないのだ)


なのに、何故か当代の流行をきっちり追っているらしき狂言ッポイ謎踊りだけは不思議と一流、土佐からの奇天烈な人選による使者さんS



彼女は彼等の全てをナチュラルに理解できるスーパーチートウーマンでいらっしゃるのだから。



こうなってくると、悲壮な決意で彼女に付いていくお歳な乳母さん(この後も、お姫様のわがままに振り回されて、ひたすら悲惨な目にあって何時の間にかフェイドアウトする運命が不動な御方。この作品の一番の被害者)に



「おばばさま。今すぐお暇をもらいなさいよ」



と、お節介な一言をかけてあげたくなってしまう。
このお姫様ご自身、仰っているではないか。




愚鈍な主君に仕えて命を散らすのは無駄死にですよ(※※非常にマイルドな表現に変換しております※※)」




と。


どうせあっちに着いたってやることなんざありゃしない。


おままごとみたいな庭で、畑仕事ごっこで農民の妻になりきって遊ぶいくらいしかお仕事はないのだ。
上記の台詞は、そもそも
旦那が一大決心して任せてくれた近代情報戦。
他ならぬご自身で、単なる短気な理由だけでぶっ壊した時にかましたんだし。


大層な美人でいらっしゃるのに、色仕掛けすら出来ない。
嫌なら旦那をぶん殴って断りゃよかっただけのお話。


おばばな乳母さんだって、その方が幸せだった。
お姫様に八つ当たりされたり、訳も分からぬ若い女達に取り囲まれて、蹴る殴るされずに済んだんだろうに。


根気よく彼女の無駄話を聞いてくれ、理由なんて何にもないのに家を挙げて庇ってくれた敵方の功臣。



彼女のせいで主君に散々になぶられてから刺殺されるわけだし。


(しかも、忠誠心からそのヒョロヒョロ槍がぶっ刺さるまで健気にもじぃ~っと待ってらっしゃるのである。いやはや)










まぁ、「つみがない」ギャグ小説はその辺にして。







僕んちの菜々さんである。
彼女を僕の爺さま婆さまがつけた名前でなく、「菜々さん」と呼ぶようになってから。


我が家はちょっぴしだけうまく回るようになった。


自分の故郷にも生まれ育った世界にもまるで無関心な彼女。
一度も訪れたこともない国の言語を「世界一美しい」と信じ込んでいるらしき彼女。



源氏物語をずぅっと研究しているサークルに属しているらしいのに、僕ですらうろ覚えに言える「末摘花(すえつむはな)」の絵がどれか、当てることが出来ない彼女。


彼女は、もうとっくにお亡くなりになった作家さんに、終わらない恋をしていらっしゃる。
自分では一行も読んだこともない、けれども彼女以外の人々にとっては大変有名らしき作家さんに。




その恋路には、我が子や自分の本当の連れ合いは不要だ。





永遠の片想いに、そんな忌々しい『瘤』なんかはひとつだって要りやしないからだ。
















親父さま「おぃ、あんまり母さんの前でイラつくなよ」
誰かの子「分かってるよ分かってますから!
     …今更僕がどうこう言ったって。
    『アレ』はもうとっくにゴミ捨て場で野ざらされて腐っちゃってるんだから」
親父さま「…『アレ』?」
誰かの子「あれは『アレ』だよ。土佐の爺さまが関わってたっていう、あの辞書モドキ」



家ごと綺麗さっぱり壊して更地にしてゴミ収集に出したのだ。
遺っているわけがない。



親父さま「そんなモンにこだわって寝たり起きたりしとったのか」
誰かの子「『そんな』だって?」




(カッチ―ン☆)



そりゃ、あんたにはまだ佐賀があるだろーけどさ。
自分がくたばりなさったら、あんたはあちらの弟さんにありがたーいお経を読んでもらえるんだけどさ。
土佐の最期の人は、地元で吹っ掛けられちゃってお弔いも儘ならない訳だけれどさ。





ずぅっと控えてきたけれど。
久しぶりに拳で語り合ってみようかな。




この現実世界には果物もお肉も樽一杯の恵比寿も存在しないのだけれど。
どうせ僕の中の四国はリアルでもゲーム(仮想現実)でもとっくに壊滅しているんだし。








さて、何年入ることになるかなぁ。



親父さまには随分外聞の悪いことになるよなぁ。
そこは大変に申し訳ないけれど。


僕もそろそろ…キッツイんだよ、












「あるぞ」





唐突な親父さまの台詞。
目が点になる。





「村史のことだろうもん。あの分厚いやつ」





え?




だって、もうずっとずっと昔に聞いたっきりで、
直系で長女なお袋さま自身が、
もうなんにも覚えちゃいないシロモノで、


僕が出会う筈であった、聞く筈であった、
僕自身を構成する丸まる半分、
その内の全てが詰まっている、


それが、、、





「出しといてやるから。
今夜はもう休め」






ちょ、ちょっと待、
何で土佐の『アレ』を、


佐賀んもんの、
もう『あっちとは関わらない』って宣言して、



その通りを実行し続けている、この人が、、



「あの、親父さま」
「そんなことでウジウジしおってからに」



こういう時。
親父さまは、決して僕の方を向かない。
そして、ちょっとばかり口調や態度が乱暴になる。


彼女をこっそり「菜々さん」と呼ぶようになってから気付けたことだ。






「いやぁ、あそこら辺の重しに丁度良かったんだがなぁ」









…。








こぉんの、クッソじじ(以下自粛させて頂きました)





何だか色々と取り留めも無く訳も分からぬ駄文ですみませぬ。
もう少々、このブログは続けられそうでする。
(ぺこり)


舅の遺作をよりにもよって漬物石にするなよぅ、親父さま。

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