長宗(曽)我部と佐賀んもん。
皆さまこんばんは。
日付が変わってしまいましたが、三十分ばかり戻って父の日ネタなんぞを。
「このさくらんぼ美味いねぇ」
「今の季節がいつか、言えるか?」
「バカ息子だからって、馬鹿にしていいわけじゃないよ親父さま」
「いいから言うてみい」
もぅ、何だかなぁ。
義務教育終えて何十年経っても、学校に居る気分だよ。
…まぁ、今更なんだけどさぁ。
「麦秋期、でしょ」
お米は春に植えて秋に収穫。
けれど、麦は年を越して今頃が刈り入れ時。
この時期、結構な農作物が収穫されて、出回るわけで。
「うむ。その通りだ」
毎日が小テストだよなぁ。
「まぁでも、さ。アレだよね」
「何だ。また詰まらんことを考えとるのか」
「そうそう。すんごいくだらないこと」
ず~っと、そうだったよなぁ。
そんなしょうもないこと考えてないで勉強しろ、とか。
そんなくだらないことより塾へ行け!とか。
そんなこと言いだすなんて、お前の頭はおかしいぞ!とか。
精神科に連れてかれたのも、懐かしい。
まぁ、院長に診察受けるまで大真面目に付き添って来たこの人、結局は途中で飽きて帰っちゃったんだけど(笑)
「今度はなんだ。言うてみろ」
飯時に、聴く耳を持ってくれるようになったのが、唯一の違いかな。
「いや、本当にしょうもない話」
「お前がしょうもないのはわかっとる」
「いあいあ、僕の今考えている話がしょうもないんであって。
決して僕本人がしょうもない、ってわけでは」
「やかましか」
うぉう。
出たよ、葉隠れ流言の葉で袈裟懸け。
ザックリ斬られちゃったので、素直に白状する。
「そうだねぇ、たださ。
この国って島じゃない?海のど真ん中だよね」
「まぁ、そうだな」
「なのに何で、一次産業っていうと、農業のことしか語られてないのかなぁ、って」
小学校に上がった時、言われたこと。
『この国は、とても小さくて山ばかりなので農作物も牧畜も苦手です。
どんなに頑張っても、今の日本人の十分の一しか食べるものが作れません。
皆さんが仲良くして助けあわないと、あっという間に困ってしまいます』
確か、こんな感じのことを、分かり易い言葉で言われたと思う。
不思議だった。
山が在るなら、樹が生えている。
川だって流れている。
流れの先は、河口で。
そこからは海がず~っと広がっているわけで。
何故、そのことを誰も言わないんだろう、って。
「爺さまの村史にあったんだよ。
あっちは棚田なんだし。
主力は樹だった、って」
「茶とか、紙だろうもん」
「そうそう。あとは、木材も力入れてたみたい」
結局は、海外からの安価な材木に押されちゃって頓挫しちゃったんだけれど。
そして、土佐の爺さまの本当の後継。
そうなる筈だったヒト。
今でも若死にを惜しまれているヒト。
彼は、村で数少ない一級建築士だったとか。
ろくすっぽ医者もいない、バスも通っていない、
辛うじて小学校だけは在ったらしい…元城下町。
彼は、過労死だと聞いている。
そして、労災はおりなかった、とも。
爺さまがおとなしくなってしまったのは、どうもそれかららしくって。
何ッつう痛々しいお話なんだか。
僕等がいっちゃん恨むべきアニキの余生そのものじゃないか。
しとしととのへたまわん、という人となりとか。
天下なんてそもそも狙ってもいないのに、適当にでっち上げられて野心家扱いされちゃったこととか。
いいように後世のジモティから馬鹿にされちゃっていることとか、
それでも馬鹿正直に自分の筋を通そうとしていたところとか、
アニキについて知れば知るほど。
遣り切れないなぁ、って思う。
「教授も、こんな気持ちになりんさったこと、あるのかなぁ」
「何だそれは」
最近の親父さまは、付き合いがよい。
僕が主語やら目的語やらをすっ飛ばしてぼやいていても拾ってくれる。
(たまに、だけれど)
「嗚呼、高知大学の今の教授サマだよ。
お袋さまの村、現在その人の苗字と一緒になってるでしょ?」
「合併して町になっとったな」
そうなんだよなぁ。
思いッくそ、そうなんだよなあ。
バリバリに御城下の名前に戻ったわけで。
其処の町名が苗字であられるということは。
土佐七雄の中でも、長宗我部よっかは、
ずぅっと有力だった、
っていうお話の、アレな訳で。
「なぁんで、もっとこう」
「うん?」
「恨みつらみとか、書き散らしちゃえばいいのに」
爺さまといい、
その御主君(の御子孫?)といい。
「ペンは剣よりも強いんじゃなかったのかねぇ」
どうせ相手は滅んじゃってるんだし。
どうせ土佐以外じゃあ、作家さん達からも(筆頭:ノーベル文学賞作家さん)
研究者さん達からもボロッカスのクソみそに書かれてるんだし。
な~に~を、しとしとと、甘っちょろくやってなさるんだか、って、
本当、ゲームのアニキみたいで、
全国的どころか、世界規模で舐められちゃうだろう、って、
実際にもうそうなっちゃってるのになぁ、って、
全く、
「バカもんが」
親父さまが悪人面になっている。
この顔のせいで、彼はかなり損をしている、と思う。
この顔のせいで、たま~にマニアックな方面の女性(not同世代)にもてなさる。
あんまり羨ましくない属性にして、
僕が使用武将だったなら、ダントツでして欲しくないベストなアシスト能力。
「それだけ正統性が、ある。そういうことだろうもん」
「へ」
親父さまが僕のボヤキを拾うのは珍しい。
こういう打ち返しをしてくるのも珍しい。
爺さまのことを肯定するなんて真似は…
「ま、あそこの川は、浅かったからな。
材木なんざ伐り出したって運べやしなかったろう」
林業なぞ、失敗して当然だ。
そう、親父さまが続けようとした時。
「あら、何言ってるの?
梅雨時はとっても水深が深くなって危なかったじゃない。
貴方だって、うちに来た時見てたでしょう」
お袋さまが、本当に珍しく、昔の話をした。
山は、一度手を入れてしまったら、
丁寧に丁寧に面倒を見てあげないといけないらしくて。
一本伐ったら、一本植える。
ただ何でもかんでも苗をぶっこめば良いわけでもないらしくって。
川を見ては、どこに植えたらいいかと歩き回って
山に教えてもらうんだ、とか。
何かで読んだんだか、
誰かが教えてくれたんだったか、
僕の頭がおかしくって、やっぱり全部妄想なのか、
良く分からないんだけれど。
(現在進行形で勉強中の僕では、まだ)
ただ、何時もなら
「下らんことを言うな」
で〆るはずの親父さまは、黙って焼酎を足しただけだった。
「まぁ、何だ。その」
「うん?何」
「あれだ、村上水軍の娘、だったか」
「書いたの和田さんだったっけ」
「所詮は小説にしろ、ああいう話もあるんだし、な」
瀬戸内海では、陸路や農耕に依らない勢力があったこと。
結構認知されてきている、らしい。
其処からずっと外っ側の土佐は、まだまだ不明なんだけれど。
まぁ、漫画なんかではギリギリで
『意外と裕福だったッポイ。
理由はわからんけど、木材なんか関係ある…かも?』
ってところまで描いてくれてるけれど。
(しかも、アニキを滅ぼした側視点で)
宮下英樹さん。
佐賀んもんも、貴方の説。
推して下さりそうでするよー。
(やっぱり此処はこの色で。
鬼武者でSOULでコラボなさってたので、お名前お借りしました)